前回は、LaserPecker LP5 を使った石材への深彫り加工についてご紹介しました。花崗岩や大理石などに、彫りの深さと質感を加えるテクニックです。
今回は、スレート素材を使ったエンボス加工(3Dレーザー彫刻) を取り上げます。立体的で印象的な仕上がりが得られ、手軽に挑戦しやすい加工方法として注目されています。
目次:
第1章:スレートエンボス加工とは?
スレートエンボス加工とは、グレースケールの深度マップを用いて、スレートの表面に凹凸のある立体デザインをレーザーで彫刻する技術です。複数回のレーザー照射で奥行きと形状を細かく削り出し、3Dの質感を生み出します。印刷や金属加工で用いられるエンボス技法を、レーザーで高精度かつ非接触で実現できるのが特長です。
スレートは表面が滑らかで比較的柔らかく、彫刻時にコントラストがはっきり出るため、グレースケールアートやロゴ、肖像、質感重視のデザインに最適な素材です。
第2章:LaserPecker LP5 を使ったスレートエンボス加工の手順
ステップ1: LDSに画像を読み込む。3Dエンボス加工を行うには、深度マップ画像が必要です。インターネットやサードパーティ製ソフトウェアで作成・入手可能です。本チュートリアルでは、LDSソフトに内蔵されているクリップアート素材を使用します。
ステップ 2: 画像を選択し、エフェクトメニューから「3Dグレースケール」を選択します。「凹型彫刻」または「凸型彫刻」を設定できます。
- 凹型彫刻: デザイン内部を彫り下げ、凹んだ立体感を表現します。
- 凸型彫刻: デザイン周囲を削ることで、模様を浮き上がらせます。
ステップ3: レイヤー数を設定します(有効範囲:0~254)。レイヤー数が多いほど3D効果は滑らかになり、彫刻も深くなりますが、所要時間も増加します。逆に少ないと短時間で加工できますが、精細な立体表現が難しくなります。
ステップ4: 彫刻設定パネルのレイヤープレビューで、各レイヤーの加工範囲を確認できます。最初や最後のレイヤーが真っ黒または真っ白な場合は、レイヤー数を調整し、不要な加工時間を削減できます。
ステップ5: 画像サイズと位置を調整し、スレート素材に収まるように配置を整えます。
ステップ6: 彫刻パラメータを以下のように設定します:光源:1064nm、解像度:4K、周波数:30、出力:100%、深さ:20%、レイヤー高さ:0.01
ステップ7: 素材を適切な位置にセットし、プレビューを行って焦点を合わせます。プレビュー中に位置微調整を行い、できる限り中心に彫刻されるよう調整します。
ステップ8: 設定が完了したら、彫刻を開始します。
*(LDSアプリやPCソフトを使ったオンライン彫刻に加え、彫刻ファイルをUSBメモリに書き出して、オフラインで彫刻を行うことも可能です(LDSアプリ・ソフト未使用で彫刻可能)。
「ファイル」→「LPBとしてエクスポート」を選択します。エクスポートには時間がかかる場合がありますので、処理完了までお待ちください。ファイル名には彫刻パラメータ(例:4K-1064-P100-D20-H0.01-Stone)を記載することを推奨します。
エクスポートしたLPBファイルをUSBメモリに保存します。
USBメモリをLP5彫刻機のUSBポートに挿入します。
LDSに接続し、「USB一覧」からファイルを選択してプレビュー・彫刻を行います。
彫刻中は粉塵や煙が発生する場合があります。素材の近くに小型の高速ファンを設置することで、煙が表面に付着するのを防ぎ、仕上がりをより美しく保つことができます。
彫刻品質と機器の安全性を確保するために、適切な石材を選定してください。 表面が粗い、凹凸がある、深い溝や突起がある石材は、レーザーの焦点が合わず、彫刻の深さにムラが生じる可能性があります。また、含水率が高い石材や、内部に亀裂・空洞があるもの、異なる結晶構造を含む天然石などは、加熱により破損や破裂を引き起こす恐れがあります。
安全かつ高品質な彫刻を行うために、レーザー彫刻専用に処理されたスレートや天然石の使用を推奨します。
第3章: 加工後のスレートを正しく洗浄と仕上げる方法
スレート彫刻後の仕上げ作業は非常にシンプルです。柔らかいブラシで表面の粉塵を軽く払い落とし、柔らかい布などで拭き取るだけで十分です。
よくある質問: スレートのエンボス加工について
1. スレートのエンボス加工に最適なレーザーは?
スレートにエンボス加工を行うには、「3Dグレースケール彫刻」に対応したダイオードレーザーが最適です。本記事では LaserPecker LP5 を使用しています。20Wのデュアルレーザーシステムとエンボスモードを搭載し、スレートへの深く精細な加工に対応できます。
2. エンボス加工とスタンピングの違いは?
エンボス加工はレーザーによって段階的に深さを掘り、立体的な表現を可能にします。
スタンピングは金型などを用いて一度の圧力で模様を押し出す加工方法です。
3. リバースエンボスとは?
リバースエンボスは「デボス加工」や「深彫り」とも呼ばれ、模様を盛り上げるのではなく沈み込ませることで、凹状の効果を生み出します。詳しくは「石材の深彫り加工」の記事をご参照ください。
まとめ
スレートのエンボス加工は、天然石の持つ素材感とレーザー技術の精密さを融合させた高度な加工手法です。看板やインテリア、アート作品など、LaserPecker LP5 を使用すれば、高精度かつ立体感のあるプロフェッショナルな仕上がりが可能になります。
正しい設定と下準備を行い、大容量のグレースケール画像にはUSBメモリを活用するなど工夫を加えることで、加工効率と完成度が大幅に向上します。
平滑なスレートも、設定と素材次第で精密な立体加工が可能です。LP5を活用して、より高度な彫刻表現に挑戦してみましょう。